権利関係 S13〜15 / 100分
← 科目選択
FUDOKATSU TAKKEN · 権利関係

権利関係 SECTION 13〜15

100分講義原稿 / 連帯債務・保証・売買 / 島崎

オープニング

はい、みなさん。島崎です。今日からですね、宅建試験の 権利関係、いわゆる民法に入っていきます。今日扱うのは SECTION 13、14、15、具体的には 連帯債務、保証、売買 の 3 本立てです。

最初にいくつか前置きさせてください。宅建試験って全部で 50 問あるんですが、権利関係はそのうち 14 問 出るパートなんです。宅建業法の 20 問と並んで、得点の中心になる科目。だからここを捨てると合格はかなり苦しい。

ただね、権利関係は宅建業法と性格が違うんですよ。宅建業法は「実務マニュアル」、日本語が読めればなんとかなる暗記ゲーム。でも権利関係は 理屈で覚えるパート です。条文を丸暗記しても歯が立たない。「なぜこういうルールになってるのか」を理解しないと、本試験で問題の言い回しが変わった瞬間にアウトです。

なので今日は、最初から最後まで 「シーン → ルール → なぜ → 覚え方」 の順で繰り返していきます。とにかく 場面のイメージ を持ってください。これが今日の合言葉です。

今日扱う 3 つのテーマ、共通するのは 「他人とお金がからむ」 場面のルール、ということ。連帯債務は「3 人で借金したらどうなるか」、保証は「友達の借金を肩代わりしたらどうなるか」、売買は「マンション買ったら不具合があったらどうするか」。ぜんぶ日常で起こりうる話です。リアルな絵で押さえていきましょう。

時間は 100 分。途中で頭がパンクしないように、各 SECTION の終わりに過去問でクールダウンを挟みます。じゃ、始めます。

SECTION 13連帯債務

S13.1連帯債務(導入)

まず SECTION 13 連帯債務。これね、典型的なシーンを思い浮かべてもらえばすぐイメージできます。

たとえば 友達 3 人で銀行から 1,000 万円借りた夫婦で住宅ローンを連帯で組んだ会社の連帯保証として複数役員が判子押した。こういう 複数の人が「同じ債務」を負う場面 のルールが、連帯債務です。

本試験ではどう聞かれるか。「1 人に請求したら、他の人にも時効が更新されるんですか?」「1 人を免除したら、残りの債務はどうなるんですか?」っていう 影響の波及 がよく問われます。

そして大前提を一つだけ先に渡しておきます。2020 年の民法改正 で、連帯債務のルールは 「原則は相対効、絶対効は例外」 という整理に変わったんですよ。これがこの章ぜんぶの軸です。古いテキストや古い過去問の感覚で解くと一発で間違えますから、ここはアップデートが必要。

じゃあ概要、重要事項、立場、相対効・絶対効、最後に過去問、という順番で整理していきます。

S13.2連帯債務の概要

まず具体的な絵で考えましょう。A・B・C の 3 人 が、銀行 D から 連帯して 1,200 万円 借りたとします。内部の負担割合は 3 人平等で、各 400 万円ずつ。住宅ローンを 3 人で組んだ、みたいなイメージですね。

このとき銀行 D は、A 1 人に対していきなり 1,200 万円全額 を請求できるんですよ。「えっ、A は 400 万だけじゃないの?」って思いますよね。普通の感覚ならそうです。でも違うんです。

連帯債務というのは、対外的には、3 人それぞれが全額の債務を負っている っていう構造なんです。これがまず驚きポイント。

1 人が弁済すれば、債務は全員について消滅します。A が 1,200 万を払えば、B と C の債務もぜんぶ消える。そして A は、B と C に対して、それぞれの負担部分 400 万円を 求償 できる。これを「対外=全額、内部=負担割合」の 二階建て構造 と覚えてください。

対外は全額 内部は割合の二階建て

もう一つ大事な特徴。債権者 D は、誰に・いくらを・どの順序で請求するか、完全に自由に選べる んです。3 人同時に請求してもいい、A だけにしてもいい、A → B → C の順でもいい。これが連帯債務の威力です。

じゃあ次のスライドで、試験で問われる重要事項を一気に俯瞰します。

S13.3重要事項

連帯債務で本試験に出るのは、ほぼ次の 5 点 に集約されます。先に地図を渡しておきますね。これを頭に入れてから個別論点に入ると、迷子になりません。

論点キーワード詳説
① 請求の自由全員に・1 人に・順次 OKS13.4
② 相対効が原則1 人に生じた事由は他に及ばないS13.5・S13.6
③ 絶対効は例外列挙弁済・更改・相殺・混同S13.5・S13.7
④ 負担部分と求償弁済者は他へ求償できるS13.7
⑤ 改正点請求・免除・時効は相対効化S13.5
旧法では「請求」も絶対効でした。それが 2020 年改正で 相対効 に変わったんです。古いテキストや過去問の感覚で解くと一発で間違えますから、ここは特に注意。

じゃあ次、債権者と債務者それぞれの立場を整理します。

S13.4債権者と連帯債務者の立場

シーンの続きです。A・B・C が連帯で 1,200 万円。銀行 D は資金繰りが厳しくて、できるだけ早く全額回収したい。D はどう動けるか。これを整理します。

まず 債権者 D の立場。これね、圧倒的に有利 なんですよ。

つまり、無資力リスクを債務者側に転嫁できる 仕組みになってるんです。これが連帯債務の本質。

一方、連帯債務者 A・B・C の立場。請求されたら、「自分は内部負担 400 万しかないんで」とは言えないんですよ。対外的には全額払う義務 がある。

ただし、払いすぎた分は他の連帯債務者へ 求償 できる。A が 1,200 万円全額を払ったら、B と C に各 400 万を請求し直せる。これでバランスを取る。

つまり連帯債務というのは、根本的に 「債権者のための制度」 なんですよ。「3 人いれば回収可能性が 3 倍」、この発想を持つと、なぜこんな不平等なルールがあるのか、見えてきますよね。

「D は負担部分の 400 万しか A に請求できない」 っていう肢が出てきたら、これ ×。対外的には全額請求 OK です。よく聞かれます。

立場が見えたところで、本丸の 相対効・絶対効 へ進みましょう。

S13.5相対効・絶対効

素朴な疑問から入りますね。銀行 D が A だけに「払え!」と請求しました。このとき、B・C にも請求したことになるんでしょうか? A の時効がリセットされたら、B・C の時効もリセットされるんでしょうか?

これが「1 人に生じたことが、他の連帯債務者にどう影響するか」っていう、相対効・絶対効の問題です。今日のセクションのいちばん重い論点なので、丁寧にいきます。

まず言葉の定義を押さえます。

そして 原則は相対効 です。絶対効は民法が明文で 限定列挙 したものだけ。覚え方は 「迷ったら相対効」。これでだいたい正解できます。

では絶対効はどれか。これが今日いちばん重要なので、表で見ましょう。

事由効力ひとことメモ
弁済・代物弁済・供託絶対効債務そのものが消えるから当然
更改絶対効債務が別物に置き換わる
相殺絶対効反対債権で相殺すれば全員消滅
混同絶対効債権者と債務者が同一人になる
請求(履行の請求)相対効改正で変更(旧法は絶対効)
免除相対効改正で変更
時効の完成相対効改正で変更
承認・時効の更新相対効1 人の承認は他に及ばない

絶対効は 4 つだけ。覚え方フレーズはこれ、絶対に覚えてください。

弁・更・相・混(べん・こう・そう・こん)

弁済、更改、相殺、混同。この 4 つ以外は ぜんぶ相対効、と思っておけばまず間違いません。

そして改正で大きく変わったのが、請求・免除・時効の完成相対効に変わった ということ。旧法ではこの 3 つも絶対効だったんです。なぜ変えたか。旧法だと「A に請求しただけで、知らないうちに B・C の時効も更新される」っていうのは、債務者にとって酷すぎるよね、っていう発想ですね。改正後は、他の連帯債務者の時効を更新したければ、その人にも 個別に請求 する必要があります。

じゃあ次、相対効と絶対効の事例を、それぞれ具体的なシーンで追っていきましょう。

S13.6①相対効の事例と効果

まず相対効の典型例、3 つ見ていきます。

事例 1:請求
A・B・C が連帯で 1,200 万円(各負担 400 万)。銀行 D が A だけに内容証明で全額請求した。
→ A に対しては時効の完成猶予が生じます。でも B と C には何の効果も生じない、これが請求の相対効。D が B・C の時効も止めたければ、B・C にも個別に請求しないといけません。
事例 2:免除
銀行 D が A に対してだけ「あなたの債務は免除します」と意思表示した。
→ A は 1,200 万円から解放されます。でも B と C は依然として 1,200 万円全額の連帯債務者のまま。ただし、B・C が後で弁済したあと、A に対して負担部分 400 万円の求償はできます。A の内部負担分まで消えるわけじゃない、というイメージ。
事例 3:時効の完成
A だけが債務を承認せず放置して、A について消滅時効が完成・援用された。
→ A は債務を免れます。でも B・C の債務は消えない、1,200 万のまま残ります。
本試験の引っかけポイント 3 つ、まとめて覚えてください。
「A への請求で B・C の時効も更新される」×
「A を免除すれば B・C の債務も 400 万ずつ減る」×
「A の時効完成で B・C も免責」×
ぜんぶ相対効、と覚えておいてください。

じゃあ次は逆に、絶対効の事例を見ていきます。

S13.7②絶対効の事例と効果

絶対効の 4 つ、ぜんぶシーンで押さえます。

事例 1:弁済(代物弁済・供託も同じ)
A・B・C が連帯 1,200 万円。A が全額 1,200 万を銀行 D に弁済した。
→ 債務は 全員について消滅。B も C も債務ゼロ。そして A は B・C に各 400 万円を 求償 できます。
事例 2:更改
銀行 D と A が合意して、「1,200 万円の金銭債務」を「A の所有する土地を引き渡す債務」に置き換えた。これが更改。
→ 元の連帯債務は消滅、B・C も金銭債務から解放。新債務は A だけが負います。
事例 3:相殺
A が銀行 D に対して別途 1,200 万円の反対債権(預金など)を持っていた。A がこれをもって相殺した。
→ 連帯債務 1,200 万は 全員について消滅
※ ここ注意。A がまだ相殺を援用していない段階でも、B・C は「A の負担部分(400 万)の限度で」履行を拒絶できる(改正民法 439 条 2 項)。「勝手に相殺はできない、でも拒絶はできる」、ここ頻出論点です。
事例 4:混同
銀行 D が死亡して、相続人が A 1 人だった。A は D(債権者)の地位と A 自身(債務者)の地位を兼ねる。
→ これが混同。A は 弁済したものとみなされ、連帯債務は B・C についても消滅。A は B・C に各 400 万を求償できます。

絶対効はこの 4 つだけ、もう一度。

弁・更・相・混 ─ これ以外はぜんぶ相対効

本試験でわからなくなったら、この呪文を唱えてください。じゃあ最後、過去問で総点検します。

S13.8厳選過去問 ○×

A・B・C が連帯で 1,200 万円の債務を負う場合、債権者 D は A に対してのみ全額の請求をすることができる。
。債権者は連帯債務者の 1 人に対し全額請求してよい。
債権者 D が A に対して裁判上の請求をすれば、B・C の消滅時効も更新される。
×。改正後、請求は 相対効。B・C には影響しない。
債権者 D が A に対して債務を免除した場合、B・C の債務も負担部分の限度で減少する。
×。免除は 相対効。B・C は全額の連帯債務を負ったまま。
A が債務全額を弁済したときは、B・C の債務も消滅し、A は各自の負担部分について求償できる。
。弁済は絶対効、そして求償も可。
A が債権者 D に対して反対債権を有している場合、A が相殺を援用しない間は、B・C は A の負担部分の限度で履行を拒むことができる。
。改正民法 439 条 2 項の頻出ルール。
連帯債務者の 1 人について消滅時効が完成した場合、他の連帯債務者の債務も消滅する。
×。時効も 相対効。他の者は債務を負い続ける。

SECTION 13 は以上です。「原則は相対効、絶対効は弁・更・相・混だけ」、この一言を呪文化してください。じゃあ次、SECTION 14 の 保証 へ進みましょう。

SECTION 14保証

S14.1保証(導入)

友達に「家賃の保証人になってくれない? ハンコ押すだけだから」と頼まれたこと、ありませんか? その「ハンコだけ」が、後で数百万円の借金に化けることがある。これが保証です。

典型的なシーンを描いておきますね。A さん(借主)が借りた家を、家賃滞納で大家 B から訴えられた。A さんに払うお金がない。すると大家 B は、保証人になっていた C、つまりあなたに「代わりに払え」と請求してくる。これが保証の現実です。

この SECTION で押さえるキーワードは 3 つだけ。付従性、補充性、連帯保証。特に 連帯保証 は本試験の大本命なので、得点源にしていきます。

では概要から見ていきましょう。

S14.2概要

保証とは、主たる債務者が借金を返さないときに、代わりに払う義務を負う契約 のこと。登場人物は 3 人いるんですけど、関係性を間違えないでくださいね。

債権者 B がお金を貸す。主たる債務者 A がお金を借りる。そして 保証人 C は、A が払わないときに代わって払う。この 3 者構造です。

ここがすごく大事なポイント。保証契約は「債権者 B」と「保証人 C」の間で結ぶ 契約なんです。主たる債務者 A と保証人 C の間で結ぶんじゃないんですよ。

A は C に「お願い、保証人になって」と 頼む だけで、契約の 当事者ではない。これ、本試験で引っかけてきます。「保証契約は債務者と保証人の間で締結する」って肢が出たら、これ × ですね。

もう一つ重要なルール。

保証契約は書面(または電磁的記録)でしなければ効力を生じない

民法 446 条 2 項・3 項。口約束では無効 です。「ハンコ押す」って言うじゃないですか、あれ法的にもちゃんと理由があるんですよ。じゃあ次、保証人の要件。

S14.3保証人の要件

保証人になるのに「資格」は基本的に要りません。誰でもなれます。ただし、債務者側から「保証人を立てなさい」と義務付けられている場合 だけは、要件があります(民法 450 条 1 項)。

その場合の要件は 2 つ。

  1. 行為能力者 であること。未成年などは ×
  2. 弁済する資力 を有すること。要するにお金を持っている人

具体例で言うと、賃貸借契約で大家から「保証人を立ててね」と言われた借主 A は、この 2 要件を満たす人を保証人にしないといけません。途中で保証人 C が資力を失った場合は、債権者 B は「要件を満たす人に交代させろ」と請求できます。

引っかけが一つ。債権者が自ら指名した 保証人なら、この要件は適用されません。「自分が選んだんだから文句言うな」というロジックですね。

じゃあ次、保証債務の性質を見ていきます。

S14.4保証債務の性質等

保証人が背負う債務は、主たる債務とは 別個の独立した債務 です。ただし、内容は主たる債務に くっついて 決まる、っていうのがポイント。

範囲のルールはこうです。保証債務には、主たる債務に関する利息・違約金・損害賠償・その他すべてが含まれる(民法 447 条 1 項)。たとえば A の借金 100 万円について保証人になった C は、A が滞納して発生した遅延損害金や利息も払う義務があります。「元本 100 万円だけ払えばいい」じゃない んですよ。これ覚えておいてください。

あと、保証人だけに違約金を設定することもできます(同条 2 項)。「保証人が払わなかったら別途 ○ 万円」みたいな約束も OK。

そして重要なルールが一つ。

保証債務は、主たる債務より重くなってはダメ

民法 448 条 1 項。たとえば主たる債務 100 万円なのに、保証債務を 150 万円にする契約は、100 万円に縮小されます。逆に契約後に主たる債務が加重されても、保証債務は加重されません

つまり 「くっつくけど、重くはならない」。これが保証債務の基本性格です。じゃあ次、保証の最重要論点、付従性に入ります。

S14.5①付従性

保証のいちばん大事な性質、付従性(ふじゅうせい)。保証債務は主たる債務に くっついて 存在する、という性質です。主が消えれば従も消える。主が軽くなれば従も軽くなる。金魚のフン、みたいなイメージですね。

付従性には 3 種類あります。

種類内容
成立の付従性主たる債務が成立しなければ保証も成立しない
内容の付従性保証債務は主たる債務より重くならない
消滅の付従性主たる債務が消滅すれば保証も消滅する

シーンで考えますね。

消滅の付従性
A の 100 万円の借金を、A が全額弁済した。主たる債務は消滅した。
→ すると保証人 C も 自動的に解放される。これが消滅の付従性。
成立の付従性
A が詐欺で借金させられて取消した、と。
→ 主たる債務は 初めから無かった ことになる。だから保証も無効。

そして大事なポイント。主たる債務者に生じた事由は、原則として保証人にも及ぶ。たとえば A の債務について消滅時効が完成した場合、保証人 C はこれを 援用 して支払いを拒否できます。また A が債権者 B に対して相殺できる債権を持っているとき、C は「A の相殺権の範囲で支払いを拒める」(民法 457 条 3 項)。

引っかけ先回り。逆方向、つまり保証人に生じた事由が主たる債務者に及ぶか、という話。これは原則として 及びません。例外は弁済・代物弁済・供託・相殺など、債権を満足させる行為だけ
「C が消滅時効を援用したら A も消える?」って肢が出たら ×。あくまで C だけが免れます。
主から従へは流れる、従から主へは流れない(満足以外)

この一言を覚えれば、付従性の問題はほぼ解けます。じゃあ次、補充性。

S14.6②補充性

付従性と並ぶもう一つの性質、補充性。「まずは主たる債務者に請求してね、保証人は二番手だよ」という性質です。保証人を守るための強力な武器が 2 つあります。

武器条文内容
催告の抗弁452 条「先に主たる債務者 A に請求して」と言える
検索の抗弁453 条「A に財産あるよ、そっち執行して」と言える

シーンで見せますね。

催告の抗弁
大家 B がいきなり C に「家賃 100 万滞納してるから払え」と請求してきた。
→ C は「ちょっと待って、まず A 本人に請求してください」と返せる。これが催告の抗弁。
検索の抗弁
B が A に催告したけど回収できず、再び C へ来た。
→ C は「A は銀行に 200 万預金があるから、そっちを差押えて」と返せる。これが検索の抗弁。

検索の抗弁を出すための要件、これは細かいんですけど押さえておいてください。

  1. A に弁済の資力 がある
  2. 執行が容易 である(預金や換金しやすい動産など)

不動産は「執行が容易」とは言えないので、検索の抗弁では使えません。

最重要ポイント:連帯保証では、催告の抗弁も検索の抗弁も 両方とも使えません。これは後の S14.10 で詳しくやります。
催告→ちゃんと言って、検索→探して ─ 一般保証だけの特典

じゃあ次、主たる債務者の持つ反撃カードを保証人が使えるか、という話。

S14.7③主たる債務者が有する権利

主たる債務者 A が、債権者 B に対して 反撃カード を持っているとき、保証人 C はそれを使えるのか、という論点です。

カードは 3 種類あります。

A のカードC の扱い
相殺権(A が B に反対債権あり)相殺できる範囲で 履行拒絶
取消権(詐欺・強迫など)取消可能な範囲で 履行拒絶
解除権(契約解除可能)解除可能な範囲で 履行拒絶

結論は、C は相殺・取消し・解除できる範囲で履行を拒絶できる(民法 457 条 2 項・3 項)。

具体例
A が B に対して 50 万円の売掛金を持っていた。A 自身がこれを B への 100 万円の借金と相殺すれば、借金は 50 万に圧縮される。
→ A が相殺してくれないとき、保証人 C は「50 万円分は払いません」と拒める。
→ ただし C が A に代わって 勝手に相殺できるわけじゃない。あくまで履行拒絶ができるだけ。
2020 年改正の表現変化に注意。改正前は保証人が代わって「行使」できると解されていたんですが、現行法では 「履行を拒絶できる」 に整理されました。条文表現が微妙に違うので注意。

覚え方フレーズはこれ。

A のカードは、C も「払わない盾」として使える(振るうのは A 本人だけ)

S14.8④情報提供義務

2020 年改正で新設されたルール、情報提供義務。保証人が「こんなはずじゃなかった」と泣かないための仕組みです。3 つあります。

場面義務者 → 権利者条文
① 契約締結時(事業債務の個人保証)A → 保証人候補465 条の 10
② 主たる債務の履行状況B → 保証人 C(委託あり)458 条の 2
③ 期限の利益喪失時の通知B → 個人保証人 C458 条の 3
①の典型例
事業のための借金で、個人を保証人にするとき、主たる債務者 A は 自分の財産・収支状況 を保証人候補に伝える義務がある。
→ A が嘘をついて、しかも B がそれを知り得たのに保証契約を結ばせたら、保証人は取消し可能
③の典型例
A が期限の利益を喪失した(分割払いができなくなって一括請求になった)とき、B は 2 か月以内 に個人保証人 C に通知する。
→ これを怠ると、通知までの遅延損害金は請求できなくなります
② の履行状況の情報提供は 「委託を受けた保証人」だけ が対象。頼まれてもいないのに勝手に保証人になった人には、情報提供義務がありません。

地味ですが、本試験で出されると差がつく論点ですね。「2 か月以内」「委託を受けた保証人だけ」、この 2 つは押さえておいてください。

S14.9⑤共同保証

1 つの主たる債務に対して 保証人が複数いる 場合、これを共同保証といいます。ここでのキーワードは 分別の利益(ぶんべつのりえき)。

分別の利益というのは、保証人が複数いるとき、各保証人は頭数で割った額しか負担しなくていい、というルールです。

具体例
A の 300 万円の借金に、保証人が C・D・E の 3 人いる。
→ 各自 100 万円ずつ 負担すれば足ります。債権者 B が「C に 300 万全額払え」と言っても、C は「私は 100 万円分しか払いません」と拒める。

ただし、分別の利益がなくなるケースが 3 つあります。

引っかけポイント。共同連帯保証は分別の利益なし。つまり C・D・E がそれぞれ連帯保証人なら、B は誰にでも 300 万円全額請求できます。
ふつうの共同保証は頭数で割り勘、連帯がつくと割り勘消滅

じゃあいよいよ、この SECTION の本丸、連帯保証 に入ります。

S14.10⑥連帯保証

来ました、この SECTION の大本命、連帯保証。保証人が主たる債務者と 連帯して 債務を負う、という特約付きの保証です。実務ではほぼ 100 パーセントこれで、賃貸の保証人欄も普通「連帯保証人」と書いてあります。

連帯保証を一言で言うと、一般保証から 3 つを「剥がしたもの」。何を剥がすか。

性質一般保証連帯保証
催告の抗弁○ あり× なし
検索の抗弁○ あり× なし
分別の利益○ あり× なし
付従性○ あり○ あり(残る!)

催告の抗弁、検索の抗弁、分別の利益、この 3 つが消える。ただし 付従性は残る。これがすごく大事。

シーン
A が家賃 100 万円を滞納。連帯保証人が C。大家 B が「C、いきなりだけど 100 万払え」と請求してきた。
C「先に A に……」 → B「連帯保証だから言えませんよ」(催告の抗弁 ×)
C「A には預金あるよ」 → B「関係ありません」(検索の抗弁 ×)
結果、C は即 100 万円全額を払う羽目に

連帯保証人に生じた事由が主たる債務者にどう影響するか、という話。原則は相対効、つまり他者に影響しません。ただし 絶対効 になるのは 4 つだけ。弁済等の債権満足行為、更改、相殺、混同。連帯債務と同じ 「弁・更・相・混」 ですね。

2020 年改正で大きく変わった点。改正前は「請求・免除・時効完成」も絶対効だったんですが、改正後は相対効に変わりました
→ 債権者が連帯保証人 C に請求しても、A の時効は止まらない。別途 A にも請求が必要、ということです。ここは改正論点でめちゃくちゃ出題されやすい。

もう一度確認しますね。

連帯保証は「催告・検索・分別」を剥がす、付従性は残す

主たる債務が消えれば連帯保証も消えます。じゃあ次の総まとめで、一般保証と連帯保証を一枚絵で比較します。

S14.11一般保証と連帯保証のまとめ

このセクションの総まとめ。一般保証と連帯保証の決定版比較を、表で一気に見ます。

論点一般保証連帯保証
催告の抗弁(452 条)×
検索の抗弁(453 条)×
分別の利益(456 条)×
付従性
随伴性
連帯保証人への請求の時効更新効(改正後)主たる債務者に 及ばず
連帯保証人の弁済主たる債務者にも効力(絶対効)
書面要件必要必要

3 秒で思い出すコツはこれ。

連帯保証は「催・検・分」がない、付従性は残る

これだけ覚えれば 9 割解けます。

追加で改正論点を 3 つだけ補足しときます。

  1. 個人根保証契約(賃貸の保証人など)は、極度額の定めが必須。書面で定めないと無効(465 条の 2)
  2. 事業債務の個人保証 は、原則として 公正証書による保証意思の確認 が必要(465 条の 6)
  3. 情報提供義務(S14.8 でやった通り)

連帯保証はリアルに重い保証です。実生活で頼まれたら、ちゃんと内容を見てからハンコを押してくださいね。じゃあ過去問で確認です。

S14.12厳選過去問 ○×

保証契約は、口頭の合意でも有効に成立する。
×。保証契約は書面(または電磁的記録)でしなければ効力を生じない。
主たる債務が時効消滅した場合、保証人もこれを援用して支払いを免れることができる。
。付従性により、保証人は主たる債務の消滅時効を援用できる。
連帯保証人は、債権者からの請求に対して、催告の抗弁を主張することができる。
×。連帯保証人には催告の抗弁・検索の抗弁・分別の利益、いずれもなし
共同して保証人となった者は、特約がなくとも、各自が全額の弁済をしなければならない。
×。共同保証では分別の利益があり、原則として頭数で按分した額のみ。連帯保証や保証連帯の特約があれば別。
債権者が連帯保証人に対して履行を請求した場合、主たる債務者に対しても時効更新の効力が生じる。
×。2020 年改正により、連帯保証人への請求は相対効。主たる債務者の時効は更新されない。
個人根保証契約は、極度額を定めなくても効力を生じる。
×。個人根保証契約は極度額の定めがなければ無効。

はい、SECTION 14 ここまで。次は SECTION 15、売買 に進みます。本試験頻出論点の連発ゾーンです。

SECTION 15売買

S15.1売買(導入)

SECTION 15、売買。宅建試験で毎年のように出題されるパートで、特に 契約不適合責任 という論点が主役です。

イメージから入りましょう。

想定シーン
あなたが 3,000 万円 で中古マンションを買って、引渡しを受けたら――
・床下にシロアリが大量発生していた
・契約書では「南向き」と書いてあったのに、実際は東向きだった
・想定より部屋が 1 つ少なかった
こういう「契約と違うじゃないか」というトラブルに、買主はどう戦えるのか。これがこの SECTION のテーマです。

買主には大きく 4 つの武器 があります。追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約の解除。覚え方は……

ツ・ゲ・ソ・カ ─ 追完・減額・損賠・解除

まずこの 4 つを口で言えるように。S15.5 以降で 1 つずつ深掘りします。

S15.21⃣売主の義務(適合物の引渡し)

売主には大きく 2 つの義務 があります。1 つ目は、契約の内容に適合した目的物を引き渡す義務

具体的なシーンで考えると、中古マンションの契約書に「専有面積 70 ㎡・南向き・エアコン 2 基付き」と書かれていたとします。売主はまさにこの契約書どおりのマンションを買主に引き渡さないといけない。

実際は 65 ㎡しかなかった、エアコンが 1 基しかなかった――そうなると「契約に適合していない」、つまり 契約不適合 となります。

契約不適合は 3 種類あります。

種類
種類の不適合注文と違う商品が来た
品質の不適合シロアリ・雨漏り・配管の腐食など
数量の不適合面積不足・個数不足

ここで歴史の話を一つだけ。旧民法 では「瑕疵担保責任」という制度で、「隠れた瑕疵があったら」という特殊な構成でした。でも 改正後は「契約と違うものを渡したら債務不履行と同じ扱い」 という、シンプルな整理になったんです。これが現代の契約不適合責任。

「隠れた瑕疵」という旧法の表現は、もう使いません。買主が不適合を知っていたかどうかも、原則として責任発生の要件じゃないんです。古い問題集の表現に惑わされないでください。

S15.32⃣売主の義務(権利移転)

売主の 2 つ目の義務は、買主に完全な権利を移転する義務 です。

こんなトラブル
3,000 万円のマンションを買ったのに、登記をしてみたら知らない人の 抵当権 がついていた。あるいは売主が他人から預かっていただけで、本当の所有者は別人だった。
→ こんな状況では、買主は「完全な所有権」を手に入れたとは言えませんよね。

権利移転義務の中身としては、

ここで大事なルール。権利の不適合も「契約不適合」に含まれる。たとえば契約では「抵当権なし」と約束したのに抵当権付きだった、地上権が設定されていた、第三者の賃借権があった――これらすべて「権利に関する不適合」として、種類・品質の不適合と 同じルートで責任追及できる(民法 565 条)。

「移転した権利が契約の内容に適合しないとき」も、種類・品質と 同じ規定が準用される。本試験でこの「準用」が問われたら ○ で OK です。

じゃあ次から、買主の 4 つの武器を 1 つずつ見ていきましょう。

S15.4買主の手段(4つの武器)

引き渡された物が契約に適合していないとき、買主の使える手段は 4 つ でしたね。地図をもう一段くわしく見ていきます。

武器内容売主の帰責性
① 追完請求修補・代替物・不足分の引渡し不要
② 代金減額請求不適合の分だけ値引き不要
③ 損害賠償請求損害を金銭で賠償必要
④ 契約の解除契約を白紙に戻す不要(軽微は不可)
具体例
3,000 万円のマンションを買ったら、浴室の給湯器が壊れていた(修理 10 万円)。
① まず売主に「直してくれ」と 追完請求(これが原則の第一歩)
② 直さないなら「10 万円分まけろ」と 代金減額請求
③ 売主に落ち度があるなら「修理代+ホテル代も払え」と 損害賠償
④ ただし、この程度では 解除はできない(軽微だから)

改正民法の発想は 「まずは契約を守らせる(追完)」 が基本。減額は追完の代わり、解除は最終手段、というロジックです。ただし契約の目的が達成できないほど重い不適合(住めないレベルのシロアリとか)なら、いきなり解除も可能。

①追完・②減額・④解除は売主の帰責性不要/③損害賠償だけ帰責性必要

ここを逆に覚えていると本試験で確実に落とします。①②④は 無過失責任 なので、売主が「知らなかった」と言っても通りません。じゃあ各論に進みましょう。

S15.53⃣追完請求

追完請求。買主が売主に対して「契約どおりにちゃんとして」と求める権利です(民法 562 条)。

具体例
あなたが買った中古一戸建てに、契約書にない雨漏りがあった。
→ 買主は次の 3 つのどれかを請求できます。
修補(雨漏りを直してくれ)
代替物の引渡し(同等の別物件と取り替えてくれ。不動産では現実的にはレア)
不足分の引渡し(面積が足りないなら追加でくれ)

ルールを整理します。

ここが意外な落とし穴。買主が方法を指定しても、売主は「買主に不相当な負担を課すものでなければ」別の方法で追完できる。買主が「代替物よこせ」と言っても、売主が「修補のほうが負担が軽い」と判断すれば、修補で対応していい。買主の指定が絶対じゃない んです。

本試験での引っかけ:「買主は売主の責めに帰すべき事由がなければ追完請求できない」 → ×。追完請求に売主の帰責性は 不要。損害賠償と混同させる典型的なひっかけです。

じゃあ次、代金減額。

S15.64⃣代金減額請求

代金減額請求。追完されないときに「その不適合の分だけ代金を安くしろ」と請求する権利です(民法 563 条)。

具体例
3,000 万円のマンションで、浴室の給湯器が壊れていたケース。追完(修理)を求めたけど売主が動いてくれない。
→ 買主は「修理代相当の 20 万円分、代金を減額してくれ」と請求できる。
→ つまり支払代金は 2,980 万円に減ります。

原則は 催告が必要 という二段階構造です。

  1. まず買主が相当の期間を定めて追完を 催告 する
  2. その期間内に追完されなければ、不適合の程度に応じて代金減額を請求できる

ただし、催告なしでいきなり減額 OK な例外が 4 つあります。

例外内容
① 追完が 不能物理的に直せない
② 売主が追完を 明確に拒絶「直す気ありません」と宣言
定期行為 で時期経過特定日時の履行が目的
④ 催告しても 見込みなし明らかに無理
追完→ダメなら減額 ─ 例外は「不能・拒絶・定期・見込みなし」
引っかけ:買主に帰責事由があるときは、代金減額請求できません。これは追完請求と同じルール。逆に売主の帰責事由は不要なので、売主が「知らなかった」では拒めません。

じゃあ次、損害賠償と解除。

S15.75⃣損害賠償請求・解除

追完・減額でも足りないとき、買主には 2 つの強力な武器があります。損害賠償請求契約の解除

深刻なシーン
3,000 万円の中古マンションを買ったら、床下のシロアリ被害が深刻でリフォーム費用に 500 万円かかった。引越し費用も無駄になり、住めない期間に仮住まいで 30 万円かかった。
→ 追完しても埋まらない損害は、損害賠償 で取り戻すしかない。
→ 被害が深刻すぎて「もう買いたくない」なら、契約を 解除 して 3,000 万円を返してもらう。

2 つの武器、ルールを整理しますね。

項目損害賠償解除
根拠564 条 → 415 条564 条 → 541・542 条
売主の帰責事由必要不要
軽微な不適合○ 請求可× 不可
買主の帰責事由制限あり解除不可

損害賠償は 債務不履行の一般則(415 条) が準用されます。売主の帰責事由が必要。賠償の範囲は履行利益まで(契約が完全に履行されていれば得られた利益)。

解除は、原則は 催告解除。相当期間を定めて催告 → 期間内に追完なし → 解除。例外で 無催告解除(履行不能・明確拒絶・定期行為など)。売主の帰責事由は不要。ただし、不適合が「契約および取引上の社会通念に照らして 軽微」なときは 解除できません

損害賠償は帰責性ありが必要/解除は軽微だと不可

超頻出の対比なので、ここを逆に覚えていると一発で落とします。じゃあ最後、期間制限。

S15.86⃣通知期間・消滅時効

契約不適合を見つけたら、買主はのんびりしていられません。期間制限が 二段構え で設けられています。

関門内容
第 1 関門:通知期間(566 条)知った時から 1 年以内に通知。種類・品質のみ。
第 2 関門:消滅時効(166 条)知った時から 5 年、または権利行使可能時から 10 年
時系列で見ると
2023 年 4 月にマンションを買って、2024 年 5 月に床下のシロアリ被害(品質の不適合)を発見した。
→ 第 1 関門:2025 年 5 月まで に売主に通知が必要
→ 第 2 関門:通知後も、権利行使は 2029 年 5 月まで(知った時から 5 年)に行うこと
超頻出の引っかけ:数量の不適合・権利の不適合には、566 条の 1 年通知期間は適用されません。消滅時効だけが効きます。
理由:数量や権利の不適合は外形的に明らかで、長期間放置されにくいから。種類・品質だけ「気づきにくい」から早めに通知させる、というロジック。
シ・ヒン(種類・品質)は 1 年で通知/スウ・ケン(数量・権利)は時効だけ

じゃあ次、契約自由と特約の話に進みます。

S15.9担保責任を負わない特約

契約不適合責任の規定は 任意規定 です。つまり、売主と買主の 合意 で「契約不適合があっても売主は責任を負わない」とする特約も原則有効(民法 572 条)。中古物件では、こうした特約が実務上よく使われます。

ただし、免責特約が無効になる例外が 2 つあります。

  1. 売主が不適合を知りながら買主に告げなかった事実
  2. 売主が第三者のために権利を設定した、または譲渡した事実

これらについては、免責特約があっても 売主は責任を免れません

そしてもう一つ重要な規制。宅建業者が売主のときの 8 種規制(業法 40 条)です。

宅建業者が売主、買主が業者じゃない 場合、契約不適合の 通知期間を「引渡しから 2 年以上」 とする特約以外は、買主に不利な特約は 無効
たとえば「契約不適合責任を一切負わない」「通知期間 6 か月」みたいな特約は無効になり、民法の原則(知った時から 1 年)に戻ります。

整理すると 3 層構造。

ルール
① 民法特約自由
② 民法 572 条売主の悪意・第三者権利は免責不可
③ 宅建業法 40 条業者売主は「引渡し 2 年」より買主不利は無効
引っかけ:「業者売主でも合意があれば免責特約は有効」 → ×。買主に不利な特約は原則無効、8 種規制は強行規定です。

じゃあ最後、解約手付の話。

S15.10解約手付

解約手付。契約締結時に買主から売主に渡される金銭で、「いざとなれば手付を犠牲にすれば契約を解除できる」権利を双方に与えるもの(民法 557 条)。

具体例
3,000 万円のマンションの売買契約時、買主が手付金 300 万円 を売主に交付した。契約後しばらくして……
・買主が「やっぱりやめたい」 → 手付 300 万円を 放棄 すれば解除できる(売主には返してもらえない)
・売主が「やっぱり売りたくない」 → 受け取った 300 万円を返した上で、さらに 300 万円を払う 倍返し。これで解除できる

ルールをまとめます。

「履行の着手」って具体的に何かというと、売主の例なら登記の準備をした・引渡しの段取りをした、買主の例なら中間金を支払った・ローンの実行を依頼した、といった行為です。判例は「客観的に外部から認識できる形で履行行為の一部をなし、または履行の提供のために欠くことのできない前提行為をした」状態、と整理しています。

超頻出の引っかけ:「自分が履行に着手したら解除できない」 → ×。解除できなくなるのは「相手方が」着手したとき。自分が着手していても、相手が未着手なら解除可能。
「履行の着手」は 相手の着手 で判断する、と必ず覚えてください。

あと宅建業者が売主のときの 8 種規制(業法 39 条)も触れておきます。

解除できる時期 = 相手方が履行に着手するまで

これも 8 種規制の一つで頻出。じゃあ最後、過去問で総点検します。

S15.11厳選過去問 ○×

売買の目的物に種類・品質の不適合があった場合、買主は売主の帰責事由がなくても追完請求できる。
。追完・減額・解除は売主の帰責事由不要。必要なのは 損害賠償だけ
種類・品質の不適合について、買主は不適合を知った時から 1 年以内に通知しなければ、追完請求等ができなくなる。
。566 条の通知期間。数量・権利の不適合にはこの 1 年通知は適用されない。
軽微な契約不適合であっても、買主は契約を解除できる。
×。軽微な不適合は 解除不可。ただし代金減額や損害賠償は可能。
解約手付による解除は、自分が履行に着手した後はできない。
×。解除できなくなるのは「相手方が」履行に着手した後。自分の着手は関係なし。
売主が宅建業者で買主が宅建業者でない場合、「契約不適合の通知期間を引渡しから 1 年とする」特約は有効である。
×。業者売主の場合、通知期間は「引渡しから 2 年以上」でなければ買主不利として無効。
売主が不適合を知っていたのに買主に告げなかった場合、「契約不適合責任を負わない」旨の特約があっても、売主は責任を免れない。
。572 条。売主の悪意と第三者権利設定は 免責特約でもカバーできない

これで SECTION 13・14・15、ぜんぶ終わりです。お疲れさまでした。

ENDまとめ・宿題・締め

はい、100 分お疲れさまでした。最後にざっと振り返ります。

SECTION 13 連帯債務。3 人で 1,200 万。誰にでも全額請求 OK。原則は相対効、絶対効は「弁・更・相・混」の 4 つだけ。改正で「請求・免除・時効」が相対効化したのが本試験の地雷ポイント。

SECTION 14 保証。友達の借金を肩代わりする契約、書面必須。一般保証は 付従性・補充性・分別の利益 の 3 点セット。連帯保証はこのうち補充性と分別の利益が消える。付従性だけは残る

SECTION 15 売買。契約と違う物件を渡されたらどうする、買主の 4 つの武器、ツ・ゲ・ソ・カ(追完・減額・損賠・解除)。損害賠償だけ売主帰責性必要、解除は軽微だと不可。通知期間は 「シ・ヒン」だけ 1 年、「スウ・ケン」は時効のみ。

テキスト閉じて、今日のキーフレーズを 3 つだけ思い出してみてください。出てきましたか? 出てこなかった人も、今日中にもう 1 回流し読みすれば必ず定着します。

宿題 ─ 今日中に必ず
  1. ○×問題で今日の 3 セクション分を解く(フドカツのアプリ)
  2. 「弁・更・相・混」「催・検・分」「ツ・ゲ・ソ・カ」 を 10 回声に出す
  3. 一般保証と連帯保証の比較表を紙に書き出す(明日の朝、白紙から)

権利関係は 理屈さえ掴めば、暗記量は宅建業法の半分以下 です。今日の 3 セクションは特に頻出。ここを落とすともったいない。じゃあ今日はここまで。お疲れさまでした!